甘い蜜




諦めて拓郎が帰る後ろ姿を、あたしは手を振って見送った。


ーーーよかった。帰ってくれて。


ホッと息をつくと、あたしはすぐに翔琉の元へ戻った。



でもそこには、あたしの代わりに翔琉を接客するヘルプの女の子。


多分新人。

名前も思い出せない。


何を話してるのかは聞こえないけど、翔琉に楽しそうに話しかける女の子。


ーーーなんか、嫌だ。


あたしは何故か、目を逸らしたくなった。


翔琉が他の女の子に接客されてる姿を、見たくなかった。



「あ!みーちゃん、おかえり!」


あたしに気付いて声を上げたのは、凛。


凛の声に、ヘルプの女の子は席を立った。


「雅さん、おかえりなさい」

優しく笑う女の子に、あたしは作り笑い。

「ヘルプありがとう」


にっこり笑って立ち去っていく女の子。


ーーーあたし、何考えてるんだ。


ここは店だ。仕事だ。


他の女の子がヘルプにつく事なんて、今まで数えきれないくらいあった。


あたしの指名がかぶるたび、他の女の子はヘルプにつかなくちゃいけない。


感謝しなくちゃいけないのに…。


ーーー翔琉の隣に他の女の子が座る姿を見るのは、すごく嫌だった。