甘い蜜




「…え、嘘」


奇跡が起こった。


「みーちゃんの負けー!」

「翔琉やっと勝てたな」


また今回も翔琉が負けるだろうと思っていたのに、あたしが負けてしまった。


「残念だったな」


そう言ってあたしにテキーラを渡す翔琉は、嬉しそうだ。


「なんか、すっごい悔しい」


テキーラを一気に飲むと、喉が熱くなった。


「もう1回やろ、もう1回!」


翔琉に負けたのが悔しくて、あたしはリベンジを申し立てた。


でもちょうどその時、黒服があたしを呼んだ。


ーーーあ、そうだ。拓郎。

すっかり忘れていた拓郎の存在。


「ごめん、ちょっと待ってて」


そう言って席を立つ時、凛と目があった。

「いってらっしゃい」

手を振る凛の顔は、何か言いたそうだった。


ーーーわかってるよ。早く帰すから。



もう1人の指名客のところへ戻ると、ちょっと不機嫌な顔をした拓郎が待っていた。


「ごめん、お待たせ」


あたしは笑顔を作って、隣に座った。