甘い蜜





拓郎が待つVIP ROOMに戻ると、

「雅、おかえり」

と、ドンペリが注がれたグラスを片手に拓郎が呼んでいた。



「今ヘルプでついた女の子、ちょーつまんなかった」


隣に座ると、すぐに愚痴を聞かされた。


「ごめんね、今日忙しくて」


でも今日は、どんな愚痴でも聞き流せる自信があった。



その後、VIP ROOMはカラオケで盛り上がった。


拓郎の連れは歌が上手くて、いつもなら聴き入ってしまう。


でも今日のあたしは、拓郎の腕時計ばかりチラチラ見ていた。



「もう1本開ける?」

拓郎の問いに、

「いいの?ありがとう」

あたしは笑顔で答える。



2本目のドンペリで乾杯をして、さらに盛り上がるVIP ROOM。



そこへ、黒服がやってきた。


そして、あたしを呼んだ。



ーーー翔琉が来たんだ。



「拓郎ごめん、ちょっと待ってて」


申し訳なさそうな顔をして、拓郎に謝った。


「またかよ」

不機嫌になった拓郎。

でもそんなの、気にしてられない。



「すぐ戻るから」


そう言って、あたしは部屋を出た。