甘い蜜




開店と同時に黒服に呼ばれ、あたしはフロアに出た。


今日の予定では、指名客は3人。

そしてもしかしたら、翔琉も来る。


まずは1人目の指名客の元へ、黒服に案内された。



「指名ありがとう」



体は仕事を覚えていた。

でも頭の中では、全く違う事を考えていた。


ーーー翔琉は本当に誘ってくれるの?

翔琉がアフターに誘うなんて、想像できなかった。



客のくだらない話なんて、右から左へ。

翔琉が来るまでの時間は、長く感じた。



やっと1人目が帰ったとき、休む暇もなく2人目が来店した。


そして2人目を接客してる途中で、3人目の指名客である拓郎も来店。



週末はただでさえ忙しいのに、あたしの頭の中は期待と不安でごちゃごちゃしていた。



「また来てね」


2人目の指名客を見送ると、足早に拓郎の元へ戻る。

途中、フロア内を見渡したけど、翔琉と智哉はまだ来ていないようだった。


ーーーまだかな。


つい携帯で時間を確認してしまう。