甘い蜜




白いロングドレスに身を包むと、何度も鏡の前に立った。


ーーーこのドレスの出番が来たんだ。


着ることも無いと思っていたのに。



隣には色違いの黒を着た凛。


普段着ない色に、二人とも鏡の前でそわそわしていた。


「いいな、黒」

「いいな、白」


鏡の中の凛と目が合い、二人同時に笑った。



白なんて、新人の時以来だ。


あの頃は歩くたびに裾を気にしていた。

白を着たときに限って酒をこぼすし。


ーーーあれから1年も経ったんだ。


急に懐かしくなった。


翔琉が来るたび、このドレスを着る。

これから出番が増えるかもしれない白いドレスを、そっと撫でた。



「黒のドレスは、智哉の好みなの?」


あたしの質問に、ほんのり赤く染まる凛の頬。


智哉の名前が出ただけで、赤くなるなんて。


「大人っぽいのが、好きらしくて…」


今あたしの目の前にいる凛はキャバ嬢ではなく、一人の女の子だ。



そんな凛を見て、あたしはつい笑がこぼれた。