甘い蜜





「みーちゃんは、怖がりで強がりなの」


凛は笑いながら、智哉と翔琉に教えていた。



ーーー怖い話なんて大嫌いだ。



「じゃあ、次こそ面白い話しよう」


そう言って智哉は、日に日に禿げていく上司の話をしてくれた。

今回は本当に面白い話で、あたしと凛は爆笑だった。



「お客様、お時間です」


でも楽しい時間は、黒服の一言で終わりを告げた。



ーーーもう閉店の時間か。



目の前では、智哉にアフターの誘いを受ける凛。



でも、あたしは今日も翔琉に誘われることはなかった。




店の外で智哉と翔琉を見送り、その後姿を見ながら漏れたため息。



ーーーキャバ嬢と客。

あたしと翔琉はまさにそれ。


翔琉はキャバ嬢として、あたしを見ているんだ。


店の中だけでいい、と言う事か。


まさか、また指名してくれるとは思っていなかったけど。



ーーーでも、何でだろう。

キャバ嬢としてしか見てくれない翔琉に、あたしは淋しさを感じていた。