「閉めていたはずの店のドアが、ちょっとだけ開いてたんだ」
ーーーこの先は聞きたくない。
平気な顔で、智哉の話を聞く凛。
あたしも平気な振りをしていたけど、拳は硬く握られていた。
「それで、そのドアの隙間から…」
ーーーもう無理!
「ストップ!」
限界だった。
智哉の話を遮り、あたしは軽く睨んだ。
「…何も面白くないから。
この話はやめよう?」
小さく呟いたあたしの声に、他の3人は笑い出した。
ーーー翔琉まで。
初めて見た、翔琉の笑った顔。
本当はずっと見ていたかった。
でも嬉しさと恥ずかしさで、あたしはすぐに俯いた。
「みーちゃんの怖がり」
凛は笑いながら、あたしをバカにする。
「雅ちゃん、ごめんごめん」
智哉は笑いながら謝った。
あたしは、
「…怖くなかったもん」
小さく強がって、カクテルをチビチビ飲んだ。

