甘い蜜



タクシーに乗って街中に向かったのは、昼過ぎの事。

深夜の寒さは嘘かのように、日の出ている時間は暖かい。


ーーーやっと春だ。


デパートの前でタクシーを降りたあたしは、春の暖かい空気を吸い込んだ。



「後で、みーちゃんのドレスも買いにいくからね」


あたしの隣で悪戯に笑う凛。


「あたしのドレス?何で?」

「後で話すよ」


そう言ってデパートに入って行く凛を、あたしは一歩遅れてついていく。


ーーー何でドレス?

あたし、この前新しいの買ったばかりなんだけど。


それに凛のあの悪戯な顔。

絶対何か企んでる。



でも何度聞いても、凛は「あとで!」と言って何も教えてくれなかった。



仕事で溜まったストレスは、買い物によって発散された。

欲しかったバッグ、新作の洋服たち、そして愛用のシャネルの香水はリピート購入。


デパートを出る時には歩き疲れた足が痛かったけど、それでも両手が塞がるほど買い物ができて満足だった。