甘い蜜



「やっぱり、好きになってから付き合わなきゃね」


これで何回目かわからないセリフを、あたしはまた言っていた。

男と別れる度、言うこのセリフ。


ーーー聞き飽きた。



「みーちゃん、それ何回目?
あたしもう10回は聞いた」


「あたしも今自分で言って、聞き飽きたとこ」


隣で笑う凛に、あたしも笑った。



「でも、今回も時間の問題じゃないかなって思ってた。
それに女に手を上げる男はだめ!」


凛が言った言葉に、あたしは頷くしかなかった。


「みーちゃんには、そろそろ本気で人を好きになってほしい」


凛の真剣な眼差しに、あたしは小さく頷いた。


ーーー自分でもわかってる。

その場の空気に流されて、男と付き合うのはもう辞める。


「次付き合う人は、本気で好きになった人にする!」


あたしの宣言に、凛はにっこり頷いた。


「ま、ちょうどよかった」


そう言ってにっこり笑う凛。


「…何が?」


灰皿に煙草を押し付け、火をもみ消した。


「みーちゃんの事、好きな人がいるの」