甘い蜜



「…たのしかったよ」


そう言った凛の頬は、ほんのり赤い。


ーーーこの反応はやっぱり…。


「智哉のこと好きなの?」


あたしの一言で更に赤くなる凛の顔。

図星だ。


「中学の時、好きだったの」

「今も、でしょ?」


あたしの問いに、小さく頷く凛。

久しぶりに聞く凛の恋の話に、あたしは嬉しくて話を促す。


「この前、偶然再会したんだ。
そのとき冗談で名刺渡したら、昨日本当に店に来てくれて…」


顔を真っ赤にして喋る凛に、

「恋する女の子じゃん」

あたしはつい笑ってしまった。


「へへ。また恋しちゃった」


中学の時に好きだった人を、数年後また好きになるなんて。

本当に智哉の事が好きなんだね。


「いーな。あたしも恋したい」

「あれ?BARの男はどうなったの?」


ーーー蓮のことか。


凛の質問に答える前に、あたしは煙草を咥えて火をつけた。



「昨日別れちゃった」



ゆっくり煙を吐き出し、凛に小さく笑った。


なかなか続かない恋に、自分でも笑ってしまう。

恋と呼べるものでも、なかったけど。