甘い蜜




最低な女だって事はわかってる。


でも、蓮も時間の問題だったんだ。



「え…何で?」



目の前の蓮の顔には、ショックが張り付いている。

でもそれも一瞬のこと。



「何でだよ!おい瑞希!」



ショックは怒りに変わる。

この蓮の顔は何度も見た。



蓮の短気な所が、好きになれなかったのかもしれない。

そう言おうと口を開いた。



ーーーいや違う。

蓮が悪いわけじゃない。


相手の嫌な所も好きになれる自信なんて、今のあたしには無いんだ。



それに気づいて、あたしは蓮に謝ることしか出来なかった。



あたしに掴みかかろうとする蓮を、まわりの従業員が止めた。


蓮がキレると手を上げるのは、いつものことだ。


ーーー周りに人がいてくれて良かった。


あたしはお金をカウンターに置き、怒鳴る蓮に背を向けて店を出た。




季節は春。


でも外は、それを疑いたくなるような寒さだった。

ほのかに明るくなった空を見上げて、もうすぐ夜が明けるんだと気付いた。