甘い蜜


更衣室にいる他の女の子に「おつかれ」と声をかけ、あたしは椅子に腰をおろした。


「凛はアフター楽しんでおいで」


着替える凛の背中にそう言って、咥えた煙草に火をつけた。


「明日話すね!休みだし」


あたしはゆっくりと煙を吐き出し、凛の言葉に頷いた。



携帯を取り出すと、不在着信と新着メールがたくさん。

そのほとんどが蓮(れん)からのもの。


その名前を見ただけで、ため息が漏れた。


ーーーそろそろ別れたい。

連絡を返すことも、喧嘩することも、面倒に感じた。



「明日起きたら、みーちゃんの家いくね」


凛の声に振り返ると、すでに着替え終わっていた。


「うん、わかったよ」


そう言って、アフターに出掛ける凛に手を振った。


凛もあたしと同じで、アフター嫌い。

なのに、こんなに嬉しそうにアフターに出掛ける凛は初めて見た。


やっぱり、凛と智哉はただの同級生ではなさそうだ。


最後に一口吸ってから煙草の火をもみ消し、立ち上がった。


ちょうどそこで携帯が光った。


蓮からの着信を知らせる、あたしの携帯。


あたしはため息をついてから、渋々電話にでた。