最後の女、最後の恋。 そして人生最後のプロポーズ。




俺は朝から気になっていた。

転校生の匂い。

少しずつ近づくと転校生のその髪に自分の顔を近づけた。

「あ……すいません……臭いですよね……すいませんっ……」

『いや、いい匂いだなって。』

そう言っても転校生は何かに怯えたような表情でひたすら謝ってくる。

どうしたんだろ。

「あ……の……あたしに近づかない方がいいですよ……黴菌移っちゃう……」

黴菌?

「あたしは汚いから……黴菌だから……すいません……案内してくれてありがとうございました……」

彼女なりの笑顔を俺に向け、すぐに屋上から逃げるように出ていこうとする転校生の腕を俺は無意識につかんでいた。