好きと言えるその日まで

 すっと背筋を伸ばした先輩を不思議に思いながら見つめていたら、信じられない言葉が耳に飛び込んできた……気がする。


 いや、幻聴だ。

 
 幻聴に違いない。


 だって、尚人先輩だよ?


 あの尚人先輩が、私を誘う……ましてや学校のない土曜日って聞こえたよ!?


 多分、勘違いだ。


 私が先輩のことが気になりすぎて、夏休みも会えなかったとか愚痴愚痴思ってたから、そのせいで良いように幻聴が聞こえたんだ。


 うん、そうに違いない。


 「おい、聞いてるのか? 葛西」

 「ひぃいいっ」

 「ひぃいって……俺、叫ぶようなこと聞いたか?」

 「い、いえいえいえ! め、滅相もございませんっ」

 「……」


 やばい、なんか超引いた目で私のこと見てるよ先輩。


 もしかして、マジのマジ?


 相手、私って間違ってのお誘いとかじゃなくて?


 ニュウッ―――い、痛いぞ!!


 定番通り、頬を抓ってみたらどうも痛いから、現実らしい。


 ……本気で、答えてもいいんだよ、ね?


 「土曜日は、あ、空いてます、けど!?」


 って、なんで可愛く言えないのかな、私!!

 
 めっちゃ意気込んで言っちゃったよー。


 ―――あれ? 先輩、なんでそっぽ向くの??


 恥ずかしいのは私なんだけど、って思いながら先輩をじっと見つめるとこちらを見ないままに先輩が……さらに信じられないことを言った。


 「土曜日、友達とっつーか。昔一緒にチームでやってたやつらと野球っつーか。まぁ草野球程度なんだけど、やることになって」

 「……野球、ですか?」

 「うんそう。お前、見に来るか?」


 先輩から予想外のお誘いを受け、私の心の中は悲鳴をあげそうになったけれど、それを表現するよりも驚きのあまり体が固まった。