なんの変哲も無い田舎町。


家の周りには田んぼがあって、かえるの合唱が聞こえる。


小さい頃は用水路でよくザリガニやおたまじゃくしを見つけて遊んでいた。


「ほら、そっち行ったぞ!」


拓(タク)が私のほうにおたまじゃくしを追い込んだけど。


うまく捕れなくて。


「ばーか。おまえ、ほんとドンくせぇよな。こんなのも捕れないなんて…」


呆れた顔をしながら、私のおでこをデコぴんした。


「もう、一緒に遊ばねぇぞ?茜(あかね)と居てもつまんねーし」


バケツを持って帰ろうとするタクに、私は泣きながらしがみついてイヤイヤと首を振った。


「ばーか。なんで泣くんだよ。だからキライだよオマエなんて」


私の手を振り払うと、すぐそばの自宅へ帰ってしまった。


……毎日こんなことの繰り返し。


小さい頃からいっつもタクに振り回されていた。