いち恋

その時、ふいに後ろから誰かに
名前を呼ばれた。

「・・・・え?・・・」

こぼれ落ちている涙を拭いながら
ゆっくりと後ろを振り返った。

そこにいたのは・・・・

見覚えのない、男の人だった。

身長はけっこう高くてスタイルが
よく、ここらへんの高校の制服をきて、
片方の耳にはピアスをしていた。

髪は前髪が目にかかるくらいの長さで
少し茶髪だった。

この人、誰?

あたし知り合いにこんなかっこいい人
いたっけ?

「あ、あの・・・・あたし、
その・・・えっと、あなたのこと
・・・・」

う~・・・なんて言っていいか
分かんないよ。

「美桜。俺のこと覚えて
ない、よな・・・・?」

その人はあたしにそう言って
寂しそうな顔をした。

え?あたしこの人に前会ってる?

いつ?どこで?

頭の中で過去をたどってみるけど
分かんないよ・・・


「あたし、あの・・・
あなたのこと、覚えてないんです・・」


「そうだよな・・・美桜は俺のこと
覚えてなくて当たり前、だよな。」

あたしは何も言えなくなった。

だってあなたがすごく、
切ない顔をするから・・・