手を繋いでいて

麻希と私がレポートを完全に仕上げ終わった頃、秋都は帰宅した。
「あ、おかえりー!」
「ん、ただいま」
今日の秋都はなんだか御機嫌である。
「どうしたの?」
私が尋ねると、秋都は一つの封筒を取り出した。
私は受け取り、中身を取り出す。
それは写真だった。
色々な風景の写真。中には私が写っている写真もある。
「あ!写真出来たんだ!」
「うん。コンクールに向けて努力しなきゃだし、明日も写真撮りに行く」
「へぇ……」
私は暫くの間、その写真を見詰めていた。
数々の風景が私の目に飛び込んでくる。
「これ、何処の写真?」
一際綺麗な写真を見て私は尋ねた。
「これは直ぐそこの山だよ」
そういって秋都はカーテンをあけ、外を指差した。
見慣れている山でも、秋都が撮ると凄く綺麗に見える。
「………」
私は見とれるあまり声を出せなかった。
「これなんか綺麗だろ?」
「え…」
それは私の写真。
秋都がいつ撮ったのかわからないが、その写真の私は、私だと思えないくらい凄く良い表情をしていた。
よく見たら写真の中の私は全て笑顔だった。
「私…これが私なの……?」
とても心臓病患者には見えないくらい元気な写真。
「そうだよ。」
秋都はその写真を懐かしげに見て答えた。
私はもう一度写真を見詰める。
(どうして写真の中の自分はこんなにも生き生きしてるんだろう……)

その日は、写真の中の自分の笑顔が頭から離れなかった。