手を繋いでいて


「ただいまー。」
私が帰宅したのは夕方の六時半。
いつもなら五時前後だが、今日は麻季とデパートに寄ったのだ。
「…あれ、秋都?」
いつもなら出迎えてくれる秋都が今日はいない。
(出掛けてるのかな?連絡くらいくれればいいのに……)
そう思い私はリビングに入る。
なんとなくモヤモヤした心を晴らすべくテレビをつけ、適当にチャンネルを回す。
「あ、これがいいかな。」
バラエティ番組で回すのを止め、私はキッチンへと向かう。
夕飯はコンビニ弁当で、レンジで温める。
(秋都居ないとなんか寂しいな…)
温め終わった弁当を持ってテレビの前に移動した時、インターホンが鳴った。
「はーい」
テレビの見たさを我慢して玄関へと私は向かった。
玄関のドアをあけると見慣れた姿が。
「麻季?どうしたの?」
麻季はにこやかに笑い、手に持っていた紙袋を掲げてみた。
「じゃじゃーん!これはなーんだ?」
紙袋を見ると私は何か分かった。しかし普通に答えても面白くないので曖昧な表現で答える。
「うーん!甘いもの!」
「ぴんぽーん!」
そして麻季は私に紙袋を差し出し
「最近恵美疲れてるでしょ?だから差し入れにケーキどうかなって」
少し照れくさそうに笑った。
私は麻季に寄っていくことをお勧めし、二人でケーキを食べることにした。
「麻季よく私の好きなケーキ知ってるよね。感激!」
「だって幼稚園から一緒じゃん!あたし恵美のことで知らないことなんて無いよ?」
「なんか怖いよ麻季」
私達は笑った。
「そういえば秋都さんは?」
麻季は2つ目のケーキに手を伸ばす。
「それが秋都出掛けたみたいでさ……連絡ないけど」
私は心配混じりに答えた。
麻季はそんな私の気持ちが分かったのか、同情するように話す。
「確かに秋都さんが連絡無しに出掛けるなんてこと無いけど、急用だったんじゃないの?深く考えると体に悪いよ」
「分かった。後で一応連絡入れてみる………ああ!それ私が食べようと思ってたミルフィーユ!なんで聞かずに食べちゃったの……」
麻季は笑いながらミルフィーユを口に運ぶ。
言葉では残念がるが、私はこの一時がとても楽しかった。




「それで……どうなんです?」
「それが難しいんですよ……彼女の場合悪くなる一方で…」
「そうですか……改善方法とか無いんですか?」
「現代の医療法では治すのは不可能かと……」
「じゃあ恵美の病気はこれからも悪化すると?」
「恐らく…。しばらく様子を見て見ましょう。それで悪化する場合は入院をお勧めします。」
「…………はい、わかりました。では失礼します……」