【兄side】

今日もまた、錠剤も一緒に吐き出してしまった妃菜。

内服薬の1日目は何とか自分で飲み直してくれたけれど、今日は昨日以上に拒否していて自分で飲み直す気配がない。

「昨日飲めたんだから、今日も頑張ろうよ」

「やー(泣)」

「妃菜、泣いたってお薬はなくならないよ。早く飲んでしまった方が良いんじゃないのか?」

「やーだー、イジワルー!」

「はいはい、イジワルでも何でも結構(笑)自分で飲まないなら、お兄ちゃんが飲ますぞ!ちょっと苦しくなるけど、頑張ってな!」

手足もジタバタさせて、拒否する妃菜の身体を起こし、手を固定し、鼻をつまんだ状態で、口の中に錠剤と水を少し入れた。

しばらくは、拒否して飲み込もうとしないのだが、さすがに息も苦しくなってきたようだ。

「妃菜、苦しいからゴックンしちゃおう。ゴックンできたらお鼻もはなしてあげるから」

飲み込まないと、息すらさせてもらえない状態にしている俺は、妃菜にとったら鬼以外の何者でもないのかもしれないが、妃菜のために心を鬼にする。

「妃菜、ゴックンできるよ!ほーら、ゴックン」

涙をボロボロ流しながら、飲み込んでくれた。

「よーく頑張った。苦しかったね、ごめんね」

こんなふうに無理やり飲ませる日が何日もあったが、頑張って副作用にも耐えてくれたおかげで、1か月後の検査では心機能の急激な低下はすこし改善されていたので、この投薬治療はとりあえずは終了することになった。