【兄side】

後ろから抱きしめる形で、体温を伝えながら話すことで、妃菜の不安を少しは軽減してやることができていればいいのだが…

「お兄ちゃんは、妃菜が甘えん坊でも、泣き虫ちゃんでも、わがままお嬢でも何でも、どんな妃菜でもいいんだぞ。思ってる気持ちをちゃんとお兄ちゃんにぶつけてきてくれるなら、どんな方法でも、お兄ちゃんは受け入れられよ!」

「うん…、どこにも行かないで、妃菜のそばにいてね」

「おお、ずっといる!約束な!」

まだ、不安は残っているようだが、少しは落ち着いたようだ。


1ヶ月後・・・

「やーだ、やらない!(泣)」

「やだねー。でも、やらないなんていう選択肢はないからね」

「やーだー、いじわるー、こっちこないでー(泣)」

「やだやだ言ってる間に終わるんだから、頑張るよ」

精神的不安からの甘えん坊は終わって、すっかり泣き虫のわがままお嬢さんが復活した(笑)

「はい、良く頑張りました」

「お兄ちゃん、こっち」

さっきまで「こっちに来るな」って言っていたのに、治療が終わると、道具を片付けている俺に、近くにくるように催促してくる。

まだまだ、甘えん坊には変わりない(笑)

「えー?さっき、お兄ちゃんのこと『意地悪!こっちこないで』って言ってたんじゃないのか?」

そう言いながら、ベッド横に近寄ると、妃菜が抱きついてきた。

「さっきは嫌なことするから!今は違うの!」

「なんだそれ?(笑)でも、それでいいんだよ。気持ちを全部表してきてくれる方が!」

「へ?どういうこと?」

「妃菜は今のままでいいってこと!それにしても妃菜はいくつになってもお兄ちゃんのこと大好きだな(笑)こんなにくっつかなくても、どこもいかないって!」

「好きだよ!お兄ちゃんに触れてると落ち着くの。」

こんなに素直に言われると、嬉しいけど、なんだか恥ずかしい。

「そっか、そっか。ありがとうな。そろそろ、お昼寝しようか」

ベッドに寝かせ、トントンしながら、頭を撫でてやっていると、安心したような表情で眠った。

1ヶ月前のように、あんなにも妃菜が思いつめなくていいように、しっかり愛情を表に出して、そのうえで妃菜にも存分に甘えられる環境をつくるように決めた。