【兄side】

やはり、目を離してる隙にチューブを抜いていた妃菜。

厳しく叱ったが、どうにか対策をしないと、また同じことを繰り返させてしまう可能性が高い。

抜いたらいけないと分かってはいても、確かに経鼻チューブはかなりの違和感が喉や鼻に生じるので、耐えられなくなる気持ちも分かるが、もう1度挿入することになったら、もっと苦しい思いをするので、どうにかして避けなければならない。

ずっと手を固定するのは、さすがに可愛そうなので、今回はミトンのような手袋を付けさすことにした。

この手袋は指の動きを抑制するために、医療現場でも小児にはたまに使用されるのもで、ミトンとは少し違い、親指も分かれていなく、5本の指がすっぽりと覆われるものなので、これを装着することで、点滴を抜いたりなどを防ぐようになっている。

「妃菜、鼻のチューブ付けてる間、この手袋してようね」

妃菜が拒む前に、素早く装着した。

「こんなのやだーー!取ってーーー」

「取らないよ!さっきもチューブ取っちゃったし、寝てる時とかに無意識に抜いてしまうかもしれないからね。抜いちゃって、もう1回入れ直すの嫌でしょ?」

「やーーーーー(泣)鬼…」

「もう1回入れ直さなくていいようにっていう優しさでしょうが!(笑)」

それでも尚、チューブの違和感に慣れないようで、気付くと鼻に手を持って行っている姿をよく見るが、手袋のせいでチューブを掴むことすら出来ないことで、すごく機嫌が悪い。

「お兄ちゃん、手袋取ってー。もう、やだ…」

「ん?まだ取らないよ、つけといてね」

「やだーー!取るのー!」

「我儘言わないの!取らないよ!!手袋取ったら、すぐチューブ抜いちゃうでしょ?」

「抜かないー!」

「手袋してても、よく鼻に手持って行ってるのに、手袋取ったら、そのまま抜いちゃうと思うよ。だから諦めて手袋しとこうね」

毎日こんなやり取りが繰り返されたが、この手袋を装着させたまま、2週間が経過し、例の薬の服用期間も終わり、食欲も戻ってきたので、ようやくチューブを抜いてやることも手袋を外してやることも出来た。