【兄side】

鼻の栓を付けようとした時、妃菜は俺の手を払い、鼻栓が床に落ちた。

「こら!なにしてんだ?」

「治療やだ…、旅行なのに、こんなのしたくない」

「旅行中でも治療はいつもしてるだろ?嫌でもやるんだよ」

「どうして?どうして、楽しい日まで嫌なことするの?旅行に来てまで、こんなことやらされてるの、きっと妃菜だけだよ。やだよ…そんなの…」

「そうだな、せっかくの楽しい旅行なのに、つらいことするの嫌だよな?気持ちは分かるけど、治療は毎日しなくちゃいけないっていつも言ってるだろ?妃菜の治療にお休みはない!治療しなきゃ、途中でしんどくなって、せっかくの旅行が楽しめなくなったら嫌じゃない?治療頑張って、夕方またお散歩行こうよ」

「やだ…、でも頑張る。だからお散歩いく」

小さな声でそう言った妃菜の頭を撫で、妃菜に新しい鼻の栓をつけた。

「じゃあ、頑張るよー。頑張ってスー、ハーね」

吸入を開始したら、妃菜はいつも通り咳き込み苦しみもがいているのを、俺は抑え込みながら、呼吸を促すよう声を掛け続けた。

吸入後の心臓の注射も痛がりながら懸命に耐えてくれた。

その後、眠った妃菜に点滴をつけ、点滴が終わって抜いてから、妃菜を起こした。

「妃菜、起きたら?お散歩行くんでしょ?」

起きた妃菜を連れて再び花畑にやってきた。

「お兄ちゃん?こんなに長い時間お外にいるの久しぶりだね!」

「そうだね、いつもは30分以内だし、1日に何度も外に出してやることないもんな?でも、この旅行はいつも頑張ってる妃菜へのご褒美だから、この3日間は特別だぞ」

「やったね!また来ようね!でも、普段ももう少しお外行きたいんだけど、いい?」

「治療も検査も頑張ってたら、また連れてきてやるよ!だから、頑張ろうな!普段の外出か…?なかなか厳しいお願いだな(苦笑)もっと元気になれば、少しずつ外出の回数や時間も増やしていけるけど、今の妃菜ではまだまだそのレベルじゃないからな…とりあえずは、今まで通り、体調に合わせてだな」