【兄side】

旅行に向けて、頑張って治療にも水分制限にも取り組んでくれていたひなだったが、薬のせいで倦怠感が酷いらしく、機嫌が悪い。

「お兄ちゃん、喉乾いたー」

「もう少し我慢しようね、夕方になったら飲ませてあげるからね」

「今、飲みたいのー、早くちょうだい、我慢できないのー!」

「ダメだ!我慢しよう、もうすぐ夕方になるんだから」

「やだ、我慢できないって言ってるじゃん!もういい、お兄ちゃんには頼まない!」

「こら妃菜!どこ行こうとしてんだ?」

そう言って、怠いはずなのにベッドから降りた妃菜を捕まえて、ベッドに連れ戻した。

「やだ!はなして!!水飲みに行くの!」

「そんな勝手なこと許さないよ!我慢できないなら、旅行やめるぞ!」

「そんなの卑怯だよ!好きな時に好きなだけ飲めるお兄ちゃんには、このつらさなんてわかんない!」

「約束は約束だよ。お水の我慢をするなら旅行行けるって言ったよな?確かに、お兄ちゃんは妃菜みたいに水分制限なんて経験したことないから、本当のつらさは分かってないのかもしれない。けどね、それでも、妃菜を守るためには、厳しくしなくちゃいけないこともあるんだよ。」

「もう少しで旅行なんだから、頑張ろうよね」

このような格闘がありながらも頑張って耐えてくれて、ようやく旅行の日を迎えた。