【妃菜side】

今日もいつものように、昼からの治療が終わってから寝ていると、お兄ちゃんと誰かが言い合っている声が聞こえ、目が覚めました。

ドアの前で耳を澄ませて聞いてみると、どうやらおばさんが珍しく来ているみたいです。

「そろそろ結婚してもいい頃じゃないの?」

「そのような相手はいませんし。僕は今のところ結婚するつもりはないですから」

「そんなのもったいないわ!あなた医者なんだから相手もいっぱいいるでしょうし。妃菜ちゃんのことがあるからかしら?」

「…もちろん妃菜のことが一番大事ですし、病気治してやりたいですからね」

「家であなたが面倒見ながら治療にあたること自体にそもそも無理があるんじゃない?あなた、妃菜ちゃんにかかりっきりで自分の時間すらもてないから、恋愛もできないでしょうし」

「そんなことないです!僕はやりたくて妃菜の主治医をして、妃菜の負担を減らすために家で治療にあたってるんですから」

「いい加減、妃菜ちゃんを総合病院に入院させたらどうかしら?妃菜ちゃんも厳しい医者としてのあなたより、兄だけの立場で優しくしてもらいたいんじゃない?」

「入院なんて、絶対にさせません!確かに、妃菜は医者として厳しいことを言ったり、嫌なことをする僕より、ただ優しいだけの僕の方がいいでしょうね。でも、僕は妃菜にどんなに嫌がられたとしても、どうしても自分のこの手で治してやりたいんです!」

口調こそは丁寧ですが、確実に怒ってる感じがします。

「わたしはあなたのことを心配して言ってるのよ。もう、あなただけと話しててもきりがないから、妃菜ちゃんにも話させてもらうわ!部屋にいるのよね?」

「ちょっと待ってください!妃菜はさっき治療が終わって、今寝てるんで!」

お兄ちゃんがそう叫んでも、足音はこっちに近づいてくるので、慌てて布団に入りました。