【兄side】

「妃菜、マスクつけるよ」

マスクは取れないようにきちんと頭で固定できるようになっている。俺は、苦しさのあまり妃菜がマスクを外そうと手を持ってくるのを阻止するために、固定も兼ねて、座らせた妃菜を抱きしめるようにした。

「じゃあ、始めるよ。これで検査全部終わりだから、頑張って早く終わらせちゃおうね」

薬を流し始めたが、まだ、最も弱い段階なので、妃菜にもまだ変化がない。

1分半が経過し、次の段階の薬を流したら、すこし苦しそうな表情になってきたが、まだ大丈夫そうだ。

また1分半が経ち、もう1段階強い薬が流した途端、妃菜は咳き込み始め苦しみ始めた。

「妃菜、大丈夫だよ。大丈夫だからね、頑張ろうね」

励ましながら、時間が経過したので次の薬を流した。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ…ゴホ……ヤー」

俺の腕の中で、苦しみから逃げるように、もがきだした。

「妃菜-!苦しいねー、頑張ってるよー、もう少し頑張るよー」

聞こえているのかどうかも分からないが、固定の手を強めながら、大きめの声で声を掛けた。

5段階目の薬が流れた瞬間、妃菜は呼吸もままならない状態になり、限界だと判断した俺は、同じマスクから、発作止めの薬を流してやり、ようやく落ち着いた。

「妃菜-、頑張ったね。お疲れ様。お家戻って休もうね」

そう言って、家の部屋のベッドまで運んで、髪を撫でながらトントンしてやってたら、疲れたのか、すぐに寝てしまった。

つらい検査が終わり、安心したような表情で眠る妃菜を見て、ようやく力を抜くことが出来た。

妃菜が寝てる間に、検査結果のデータを見て整理しないとな。

少しでも、良くなっていればいいのだが……