【兄side】

妃菜が風邪をひいてから、普段の処置や治療に加え、1日3回の喉の治療が増えた。

毎回、咽頭反射に一生懸命耐えながらも、頑張ってくれた。

開口器で毎回、強制的に口を開けさすのもかわいそうだと思い、開口器を使わずに、治療しようとしたこともあったが、アイシングの1本目は耐えても、2本目の前にぐずり始めて、頑なに口を閉じてしまったので、すぐに開口器を装着した。

妃菜にはかわいそうだが、開口器を使用した方がスムーズに処置が進むので、痰吸引の際にも今後、開口器を使用していこうと思う。

もう喉の炎症も治りかけていて、最後の喉の治療が終わった。

「はい、終わり!本当によく頑張ったね」と頭を撫でて褒めてやる。

「うん!でも、もう二度とやらないからね」

「ははは、そうなればいいけど、たぶん無理だと思うぞ(笑)妃菜はよく風邪ひくんだから!喉の風邪だったら、必ずやることになるしね」

「お兄ちゃんのイジワルー!!」

ちょっとからかってやったら、妃菜は拗ねてしまった。

そんな姿もすごく愛おしく思える。

翌日から、我が家に普段の生活が戻った。

「お兄ちゃん、お外いこー!行きたーい!!」

風邪が治って早々に、「外出したい」と騒ぎ出した(苦笑)

「ダメだよ!風邪が治ったとこでしょ?」

「えー!!いつならいいの?お散歩行きたいよー」

「妃菜の体調のことがあるから、いつかは言えないけど、当分はダメだよ!」

「えー、ケチーー!!いいじゃん、ちょっとぐらい!」

「お兄ちゃんはケチじゃありません!(笑)それに、ちょっととか時間の問題じゃないの!今の妃菜を数分でも外に出すことはできません!」

「ほんのちょっとなんだよ?そのくらい良いでしょ?」

「ちょっとでもダメだって言ってるでしょ?また風邪ひいて、つらい治療しなくちゃならなくなるよ!もう、いい加減、諦めな!!今度連れてってやるから、それまでは我慢!」

「もー、ケチ!わかった…」

ようやく諦めてくれたようだ。

妃菜にとっては風邪ひとつでも、症状が重くなるから、なるべく風邪をひかせないようにしてやらないといけない。

そのためには、たった数十分の外出でも、しっかりと検討して決めないといけないため、妃菜がねだっても、そう簡単に許可はできないんだ。