【兄side】

妃菜の喉は酷く炎症を起こしているため、まずは、かなり冷たく冷やした長い綿棒で喉のアイシングをしてやらなければならない。そして、次に薬を塗らなければならない。

どちらも、喉の奥にまで長い綿棒を入れ、喉にこすり付けることになるため、大変な苦痛が伴う処置になるはずだ。

痰吸引でも咽頭反射がよく起こる妃菜は、おそらくこの処置ではもっと酷い咽頭反射が起こり、苦しむに違いない。

「妃菜、今から喉を冷やしてあげるから、苦しいけど頑張ろうね」

妃菜の喉まで綿棒を入れた途端、咽頭反射が起こり始めた。

「オエッ、オエッ」

喉に綿棒をこすり付け、アイシングを始めると、今まで以上に苦しそうに嗚咽を繰り返していた。

「妃菜、苦しいね。早く終われるように頑張るよー」

そう言って、ぬるくなった綿棒を一旦抜き、新しい冷えた綿棒を再び入れ、アイシングを続けた。3本分の綿棒でのアイシングをしなければいけないため、時間がかかることは分かっているので、いつものように「もうちょっとで終わる」とは言ってやれなかった。

アイシングはもう1本しなければならなくて、綿棒を抜いて、新しいのを再度入れようとした時、妃菜が泣きながら、激しく顔や固定されている手足を動かし始めた。

「妃菜!危ないから、そんなに動かないで。苦しいけど、冷やすのはこれで終わるから、頑張ろうねー」

動く頭をしっかりと固定しながら、最後のアイシングを始めた。

アイシングは終わったが、次は咽頭反射に加え、薬がしみて少し痛みが生じるのだ。

「このままね、のどにお薬塗ろうね。これもさっきと同じだけど、少ししみると思う。これ終わったらお口のやつとってあげるから、頑張んなきゃねー。じゃあ、いくよー」

これも、さっきのアイシングと同じように、咽頭反射が酷くでたが、なんとか頑張って耐えてくれた。

「終わったよー。お口の機械外そうね。頑張れて、えらかったねー!」

開口器を外してやった後の、妃菜から予想通りの第一声が聞こえた(苦笑)