お兄ちゃんは妹の主治医

【兄side】

消えそうなほど小さな声で「頑張る」と言ってくれたことが、本当に嬉しくて、何とも言えない気持ちになった。

そんな妃菜のために、なるべく苦痛が少なくて済むように治療をしてやりたいが、妃菜の治療は過酷なものが多いので、なかなか難しい現実がある。

吸入も胸の注射もいつも通り、大変な苦痛が伴い、大号泣だったものの、なんとか頑張って耐えてくれた。


夕方になり、寝ている妃菜を起こした。

「妃菜、よく寝てたね。ちょっと起きてみようか」

「お兄ちゃん、もうしんどくないよ」

「そっか、よかったね。お熱も下がったしね。あとは、喉の炎症と痰だけだね」

解熱剤のおかげで熱は下がったものの、喉の炎症が酷く、痰の詰まりも多いため、それらを何とかしないとならない。

「妃菜、早速だけど、もう1回痰の吸引頑張ろうね」

「もー、やだ……」と必死に頭を横に振る

「嫌だけどね、やらないと苦しくなるから頑張ってやるよー」

そう言ってすぐに、妃菜の口に開口器をはめた。

ちょっとかわいそうなやり方かもしれないが、さっきみたいに喉に入れるまでに、カテーテルを噛まれるのを防ぐにはこれしかない。

突然はめられた開口器に、妃菜は泣いて嫌がっているが、手足を固定しているために、そんなに抵抗できなくなっている。

「カテーテル入れるよ。ちょっとの間、苦しいけど頑張って我慢ねー」

そうして、痰を吸引している間も、苦しさから逃れようと頭を左右に動かそうとする妃菜の頭を押さえながら、吸引していく。

「はい、終わったよ。頑張ったね。次はね、妃菜の喉が真っ赤だから、喉を冷やしてから、お薬塗るから、それまでお口このままね」