【兄side】

やっぱり、風邪をひいてしまった。

抵抗力の弱い妃菜は、外出をすると必ずと言っていいほど、体調が悪化する。

だから、本当は外出なんかさせたくないんだ。

診察すると、鼻水もだいぶ出てるようだったし、今日は夕方の鼻の吸引だけではすまないはずだ。

鼻の吸引はこまめにするとしても、結局、痰が出来てしまうだろうから、口からの吸引も数回行わなくてはならないだろう。

それに加えて、いつもの吸入と胸の注射もしなければならない。

仕事を終え、上に上がって妃菜を診察した。

「妃菜、微熱のままだね。しんどくなってない?」

「う、ん。だ、いじょ、ぶ」と、痰が絡まって苦しそうな妃菜。

「大丈夫そうじゃないね。痰が絡まって苦しくなってるから、痰吸引しようね」

「やだ…」

「吸引しないともっと苦しくなるからね、頑張るよー」

妃菜はまだ嫌がっているが、吸引の準備をした。そして、妃菜の口にカテーテルを入れ、そこから喉の奥まで進めていこうとした時、カテーテルを噛んで、抵抗してきた妃菜。

「こら、妃菜!カテーテル噛まないの!早く放しなさい!」

そう叱っても、妃菜は歯に力を入れ、ギュッと口を閉ざしたままなので、俺は妃菜の鼻をつまんだ。

「妃菜、ほら、お口開けて。苦しいだけでしょ」