【兄side】

毎日毎日、妃菜はうるさいぐらいに「外に出たい」と頼んでくる。

抵抗力が弱く、体温調節もうまく出来ない妃菜を外気に触れさすことは出来るだけ避けたいことであるため、普段は容易に外出を許可しないのだが、ストレス発散も大切なので、たまに散歩に連れて行ってやるようにしている。

しっかり上着を羽織らせ、マスクも装着させ、外での歩行は心臓の負担になるため、車いすに乗せる。

久しぶりの外出で、妃菜はとっても嬉しそうだ。

当たり前だが、さっきまでの治療の時とは全く違う表情をしている。

「お兄ちゃん、早くいこー!!」

「ああ、行こうな。今日は30分だけだからな!」

「わかったから、早くー!!」

最近調子のいい妃菜だが、それでもまだ外出は30分が限界だ。それを約束させてから、出かけた。

30分後・・・・・・

「妃菜、もう帰るよ」

「え~、もうちょっとだけ良いでしょ?ね、お願い。」

「ダメだよ。30分っていう約束だったでしょ?お散歩はまた出来るでしょ?」

「またって…、お兄ちゃん全然外連れて行ってくれないじゃん!」

「たまに連れて行ってあげてるだろう。妃菜が治療頑張って、もっと元気になったら、今よりは頻繁にお散歩も行けるんだから、今日は我慢して、帰るよ。」

まだ、グズグズ言っている妃菜を連れて帰り、ベッドに寝かせた。

「楽しかったね。また行こうね」

「うん、絶対連れてってね」

「分かってるよ。じゃあ、診察と点滴させてね」

帰宅後の診察では、何も変わりなく、いつも通りの処置や治療をし、1日が終わった。