【妃菜side】

「お兄ちゃん、お外行きたい」

「ダメだよ」

「え~、お願い!ちょっとだけ!ちょっとだけならいいでしょ?」

「妃菜、何回言っても同じ!ダメなものはダメです!」

「ケチー!!」

こんな会話が毎日のように繰り広げられています。

普段から外出すら禁止されているわたしは、調子のいい日にはお兄ちゃんに外出したいと頼むのだが、いい返事はもらえません。

本当に頑固な意地悪な主治医サマです…

こんなこともありました。

「お兄ちゃん、外の空気吸いたい!部屋の中ばっかりじゃ息が詰まるよー!」

「はいはい、わかったよ」

そう言ってくれたお兄ちゃん。今日は外に連れて行ってもらえると思ったのに…

「少しだけ窓開けていいから!でも、少しの時間だよ!」

そういう意味で言ったんじゃないのに、本当に意地悪なんです。

今日もいつものようにお昼の吸入と胸の注射を終え、少しお昼寝をした後、

「お兄ちゃん、お外いこーよ!」

すると、いつもとは違う答えが返ってきたんです。

「そうだね、少しだけお散歩行こうか!」