【兄side】

今から、寝る前の吸入治療をしないといけない。

妃菜の苦しむ顔が容易に想像でき、辛いが、やるしかないことだ。

今回の吸引から、鼻に栓をして、鼻呼吸が出来ないようにするため、さっき下の診察室から鼻用の栓をもってきた。

「妃菜、今から吸入するから、お昼に言ったように今回から、お鼻に栓するからね」

栓をしたが、妃菜は本当に嫌なようで涙をこぼしながら、栓を取ろうと、鼻に手を持っていった。

「妃菜!外さないよ。手戻そうね」

「やだー、やめてー」

「じゃあ、今からね吸入始めるよ。お昼みたいに頑張ろうね」

優しく諭し、妃菜の身体を抱くかたちで片手で固定し、もう一方の手で吸入器を持ち、妃菜の口に当てた。

「妃菜、スー、ハー、スー、ハー、しよう。大丈夫だよー」

呼吸を促していたら、途端に、妃菜が咳き込みだした。

「妃菜、大丈夫だからね。ちょっと苦しいけど、ちゃんとスー、ハー、って息しようね」

「逃げちゃダメだよー、ちゃんとお口に当てようね」

苦しくて、吸入器から顔を遠ざけようとする妃菜に注意しながら、妃菜の頭が動かないように固定し、口と吸入器を密着させた。