【兄side】

こう言って、固定されている手足をバタバタさせ、抵抗してくるが、ここで、時間をかけると、恐怖の時間を長引かせるだけなので、妃菜の言葉は無視して続ける。

「痛いよ!我慢ね!」

針を心臓まで刺した瞬間から、妃菜の悲鳴が部屋中に響く。

「ぎゃー!痛ーいー!!ぎゃー、やー、いやー」

「痛いね。妃菜、頑張れてるよ」

注射液を注入する部位まで針を到達させる。

「いたいー!もう、終わりーーー!!!」

「もう終わるから、もうちょっと頑張ろうね」

薬液を注入する時も、何ともいえない激痛がある。

「妃菜、お薬入れるから痛いよ」

注入中・・・

「きゃー!ぎゃー!ぎゃー!痛いー!」

妃菜はさっきまでより激しく泣きわめいた。

「はい、終わり!痛かったね。よく頑張った」

針を抜き、止血処置をしながら、そう褒めてやる。

毎回、終わっても泣き止まない妃菜の拘束具を外してやり、ベッドの上に上がった俺の膝に妃菜を乗せ、頭を撫でてやりながら、泣き止ますようにしている。

「妃菜、痛かったね。よく頑張ったね、えらいよ。もう今日はやらないからね、大丈夫だよ」

優しく声をかけ続けていると、妃菜はウトウトし始め、寝てしまった。

吸入に胸の注射と昼からの治療は妃菜にとっては辛いものばかりで、すごく体力を使うので、昼は注射の後、必ず寝てしまう。

そんな妃菜をベッドに寝かし、終わりかけている点滴を交換し、部屋を出る。

夕食前に妃菜にはもう一つ処置が待ち受けている・・・