【兄side】

この注射は大人でも耐えられないぐらいの激痛を伴うので、もちろん妃菜も毎回、大絶叫。

動くと危険なため、手足・腰を固定するのだが、今では抵抗せずに付けさせてくれるが、それすら初めの頃は嫌がって、なかなか拘束具を付けることが出来ずに大変だった。

固定された妃菜は、目をウルウルさせて、俺を見上げている。

そんな顔で見られると、これから治療することをを躊躇してしまうけれど、気持ちを切り替えてやり始める。

「妃菜、今から始めるよ。まずは消毒だから冷たいけど、痛くないからね。」

毎日やっていることでも、少しでも妃菜の不安を軽減してあげるために、一つ一つの過程で必ず説明し、声をかけるようにしている。

それでも毎回、妃菜は緊張と恐怖でガチガチに固まっている。

「妃菜、大丈夫だから、もうちょっと力抜いて楽にしてようね。ずっと力入れてちゃ、疲れちゃうでしょ?痛いことするときは言うからね」

「・・・」

「妃菜、今から針刺すよ。まだ、心臓まで刺さないから、ちょっと痛いだけだからね」

「はい、ちょっと痛いよー!」

「痛っ!」

「えらかったね、1回目痛いのは終わり」

ものすごく痛いのはここからだ。

「妃菜、今から心臓に刺すから、痛いよ。頑張って耐えようね」

「やー、やだー、やらないでお兄ちゃん…」