お兄ちゃんは妹の主治医

【妃菜side】

いきなり鼻をつままれ、息できなくなったから、口でするしかなくて、そうするとだんだん苦しくなってきて、逃げたいのに、お兄ちゃんに固定されていて、出来なくて、苦しくなる一方だった…

苦しくて仕方ないのに、お兄ちゃんはやめてくれない。

その時、「ピー」と吸入器が終了を告げた。

「はい、終わったよ。よく頑張ったね」

お兄ちゃんはそう言いいながら抱きしめて、頭を撫でてくれた。

お兄ちゃんの温もりが伝わってきて、いつしか泣いていた。

「苦しかった…、やだったのに…(泣)」

「うん、苦しかったね。嫌だったのに頑張って、えらかったよ」

「うん……。やだったのに、やめてくれなかった…。もうやだ…」

こうしてひたすら泣き続けていると、

「妃菜、嫌だったのは分かったから、一旦泣き止もう。苦しくなっちゃうからね」

「もうやらない……!」

「今は、もうやらないよ」

「もう、ずっとやらない…」

「妃菜、残念だけどね、それは出来ないよ。毎日、昼と夜にやらないといけないって言ったでしょ?」

「やだ…!今日はこれでお終いがいい。頑張ったの…」

「苦しいのに頑張ったよね。ちゃんと分かってるよ。でもね、夜もやらないとね。やらないわけにはいかないんだよ」

「やだ…、やりたくない…」

「うん、苦しいもんね。妃菜の気持ちはすごくわかるよ」

「だったら…」

「気持ちはわかるんだけどね…でも、やらないと辛くなるのは妃菜なんだよ。そうならないためにも吸入はとっても大事な治療なんだよ」

「でも、すごく苦しいの…。今日はいつもより、とっても…」

「そうだよな。今日は1回目に妃菜がズルして、お口で呼吸してなかったから、2回目はお鼻をつまんだでしょ?」

「うん…。お兄ちゃん、ごめんなさい」

「そのことは、もういいよ。さっき頑張ったからね」