「……」
水無月さんは起きない。
俺も声をかけない。
「……」
ヒグラシの鳴き声と、車の走る微かな音と、風に吹かれるカーテンと、水無月さんの髪の毛。
部屋に射し込む橙色、空色を反射して紫に色づく影。
「……」
どうしてか、わからないけど。
この部屋に流れる空気が、とても大切なものに思えてしまって。
「……」
もう一度、目を閉じた。
熱はすっかり下がっていて、だからひとつ心配なのは、この風邪が水無月さんにうつってないかってことで。
「……」
まあ、その時は、俺が看病すればいいか。
なんて。
そんなことを、夏の終わりに、思ったりした。


