となりの水無月さん。






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目が覚めてまず、暑い、と思った。

驚くほど汗をかいていて、布団から手を出して額を触ろうとしてから、そこに冷えピタがあることに気がついた。

それはまだ、新しいように思えた。


……カナカナカナカナ、と。

ヒグラシの鳴く声が聞こえる。

さわさわと、カーテンが揺れている。

半分ほど開けられた、ベランダへと続く窓。

そこから射し込む夕暮れの色を辿って視線を下ろし、俺はそこで初めて、すぐ傍に人が寝ていることを知った。


「……っ」


水無月さんが寝ていた。

ベッドに頭を直に乗せて、ぐうぐう寝息を立てて。

着ている服は、夜に見た時と同じもので、もしかして、もしかしなくても。


……ずっと、居たのか、ここに。この人は。


仕事はどうしたのか、とか、今日は休日だったっけ、とか、いろいろなことが脳内を一気に駆け巡って、

でも。


「……」


テーブルに乗った、ラップすらかかってない不恰好なりんごとか、たっぷり水の入ったコップとか、使い終わった冷えピタの山とか。

何故か俺の服の袖を握ったまま、ぐっすり眠る、水無月さんとか。

そういうのを見ていたら、なんだか気になっていた全てが、空気みたいに体から抜けていくみたいだった。