となりの水無月さん。






だけどそれは、言わないでおいた。


わからないほど、水無月さんと一緒に居た時間は短くない。

本当は暑いし、本当は眠いし、本当は疲れてるのは、水無月さんの方だ。

今日は平日で、水無月さんは仕事だったし、時刻は夜中の12時を回ろうとしている。

無理をしてるんだなってことは、風邪を引いていても、わかった。

わかってしまった。


それなのに水無月さんは、笑うのだ。



「私はここに居るから、眠ってていいよ、小野くん」


そう言って、笑うのだ。


「…………っ」


うなずくだけで、精一杯だった。

水無月さんの笑顔が、閉じたまぶたを震えさせる。

額に貼った冷えピタを、そのまぶたに押し付けたいくらいだった。


……水無月さんが居てくれて、よかったです。


そう、言おうとして、言えなかった。

言葉を発すると、緩み過ぎた涙腺が、途端に崩壊してしまいそうだったから。

なんで泣きそうになったのか、自分自身、まったく意味がわからなかった。

水無月さんと居ると、自分が泣き虫なんじゃないかと思ってしまう。

それくらい、水無月さんと居ると、喉の奥から込み上げてくるものを、上手く止められなくなる。


…それとも、38度の熱のせいかな。



ギュッと瞼を閉じて、反対側に寝返りを打つ俺の頭を、水無月さんが二度、撫でた。