午後3時だし。ちょうど眠くなる時間だし。
「ねえねえ小野くん」
欠伸を噛み殺していると、水無月さんに呼ばれた。
顔を向けると、相変わらずひょっこりという様子で、衝立の向こうから顔を覗かせる水無月さんと目が合った。
「はい?」と返事をする。水無月さんの寝癖がついた髪の毛を、初夏の風が撫でて行く。
「洗濯物取り込んだら、ヒマになる?」
「……まあ」
「じゃあさ、」と、水無月さん。「洗濯物片付けるの手伝ってほしいんだ!」
やっぱり、嘘でもなんでも、理由をつけて忙しいって言えばよかった。
「……洗濯とかしたんですか…」
「うん、昨日ね?着る服がなくなってきたから、一気にこう、があーっと」
なんでこう、俺に用事がない時に限って、珍しいことするかなこの人。
ホント気まぐれだと思う。
普段は自分から洗濯機を回そうなんて、絶対に思いつきもしないような人なのに。
「があーっと」というところで、右手の人差し指をくるくると回した水無月さん。
なんだかそれが、とんぼの目を回そうとする、子供みたいな感じだった。
「……あの、」少し考えてから、俺は聞いた。「この間みたいなことがあったら、今後一切洗濯物の手伝いはなしですよ」
「この間?」水無月さんはくるくる回していた右手を止めて、空を仰ぐように視線を上へと投げた。