「小野くん生きてる!?」


玄関扉が無遠慮に叩かれ、聞き慣れた声が向こう側から必死に呼びかけてくる。

寝たり起きたりを繰り返していた頭が、その声に反応して現へと目覚める。


……出来れば、もう少し遠慮がちに訪問して欲しい。こんな時くらい。


重たい体にムチ打って起き上がり、ズルズルと足を引きずるようにして、やっとの思いで玄関に辿り着く。

それからガチャリと鍵を開けるや否や、グワッと、それはもう風すら切るような勢いで、扉が向こうから開け放たれた。


「小野くん大丈夫!?」


そこに居るのは、言わずもがな水無月さんで、いつものジャージとデコ出しという出で立ち。

そんないつもの水無月さんを見て、どこかぼんやりと安堵する自分が居た。


……風邪を引くと寂しがりになるって、聞いたことあるなあ、そう言えば。


なんて思いながら、俺は水無月さんを見つめて、答えた。


「……なんとか、生きてます…」


言いながら、フラつく体を壁に預けて息を吐く。

水無月さんの慌てる様子が、見なくても感じ取れた。


「わあ〜小野くん!死んじゃダメだよー!」


勝手に殺すな。