あの水無月さんが生き物を飼うなんて、絶対に阻止しなければならない。
どう足掻いても3日、いや2日で放置するに決まってるし、その分のしわ寄せが俺に回ってくることも学習済みだ。
「ぜったいにダメです!飼わないでください!」
「飼う!飼うの!水無月さんもう決めたの!小野くんがここに来るちょっと前から決めてるんだもん!」
「じゃあ俺に世話頼まないでくださいね!?」
「…………、が、がんばるよ?」
「そこもっと自信持って言えよ!!」
言うと、水無月さんは怒り顔から、徐々に拗ね顔になっていく。
膝に両手を置き、口を尖らせて、もごもごと。
「……今日、金魚欲しくて来たのに…」
もう金魚鉢も餌も買ってるのに…。
なんて言いながら、水の中を優雅に泳ぐ紅色の金魚を見下ろす、水無月さん。
金魚鉢買ってるんですか…どんだけ準備整ってるんすか…っていうか祭りの醍醐味そこじゃないですよね……。
とかなんとか、そんなツッコミ所満載の水無月さんに、俺はため息。
じーっと金魚を見つめる水無月さんの横顔をしばし睨んで、またため息をついてから。
「…………。わかりました、どうぞ飼ってください…」
と、俺は項垂れるようにして、折れた。