「じゃあね、小野くん、これやろう、これ!」
自分の足元あたりを指さして、水無月さんはわくわくを隠せない、隠す気もない表情で言う。
先ほどと同じ場所に居たので、そういえば邪魔だったなあと申し訳ない気持ちになりながら、水無月さんの指先を追って視線を落とすと、そこには。
「……金魚?」
「そう!金魚!可愛いなあって思ってね?」
「ね?」と小首をかしげる水無月さん。
さっきからじーっと見つめていたのはこれだったのか。
しゃがみ込んで金魚を覗き込む水無月さん、その隣に同じようにしゃがみ込んで、俺は金魚を目で追う。
「……金魚、飼うんですか?」
「飼う!」
「ちゃんと世話できるんですか?」
「…………。できるよ?」
「今の間を見逃すとでも思ったんですか水無月さん。絶対ダメです。生き物禁止です」
金魚を眺めながら言い切ると、途端にこちらを向く水無月さん。
その表情は「心外だ!」と言わんばかりのもので。
「なんでさ!ちゃんと世話できるもん!」
「ダメです。」
「小野くん酷い!いいもんいいもん、小野くんには金魚の餌やりさせてあげないんだから!」
「……、いや飼うこと前提で話進んでますね!?」


