「とってないよ?」
「そんな“なんで?”みたいな表情で言わないでくださいね⁉︎西村さん絶対心配してますよ⁉︎」
当人である水無月さんに代わって、何故か俺が焦っているなんておかしな状況。
水無月さんは「んー」と、あごに空いている方の手、人差し指を当てて、唸る。
「心配、してるかなー」
「してますよ…どう考えてもしてますよ水無月さん…常識どこに落としてきたんですか……」
今更だけど。
「んー…そっかあ、そうだよね〜……」
水無月さんは、どこか浮かない顔つきでつぶやく。
「でも、私、西村と一緒だと、楽しくないわけじゃないんだけど、なんていうか、よくわかんないけど……」
「……」
「すごく楽しい!って、ならない、っていうか……」
「……」
「あ、でもはぐれたのは私が悪くてね?西村がはぐれないようにって手を繋いでてくれたんだけど、なんか“うーん?”ってなったから、手を離して歩いてたら、はぐれました〜」
「……そうですか」
「うん、そうなのです」
あはは〜、と。
水無月さんはちょっぴり、申し訳なさそうに笑った。
水無月さんには似合わない、笑い方だと思った。
「……そんな小野くんは、お友達どうしたの?」
「あっ。」
言われて思い出した。何も言わずに、離れて来てしまったこと。
「……はぐれました」
素直に答えると、水無月さんは猫目をパチパチとさせ、それから。
「そっかあ。じゃあ、小野くん、私と一緒だ」
と、ふんわり、笑った。


