「……ナンパですか?」
「あ、なんか、そんなのだったかなー」
のんびり答える水無月さんに、俺はその場でしゃがみこみ、いや、崩れ落ちそうになった。
……ナンパか。ナンパだったのか。
それならそうと言ってくれればよかったのに。いや、言ってもらったところでどうすればいいかなんて知らないけど。
でも、もうちょっと、なんかこう、言えたかもしんないのに。
なんて、まあ、別にいいけどさ。
だって水無月さんが目の前で、
「小野くん、ヒーローみたいだったね!」
とかなんとか、嬉しそうに、俺の手を握って振ってるから、ね。
なんでもいいです、もう。
水無月さんには、敵いませんから。
とか、思う。
「…えっと、じゃあ同僚の西村さんはどうしたんですか?」
気になって尋ねると、水無月さんは首をかしげるようにして、
「はぐれた〜」
と、それはもう気の抜けるような声で、そう答えた。
……なるほど。迷子か。
水無月さん、また自由奔放にはしゃぎ回りましたね。絶対。
「……連絡は取ったんですか?」
聞くと、水無月さんは頭を左右に振って否定した。


