となりの水無月さん。






「……小野くん?」


後ろから、水無月さんが呼んだ。

振り向くと、水無月さんと目が合った。

つまんなそうにしていた水無月さんは、俺と目が合った瞬間、それはもう、パァァっと、花が開くように、笑顔になった。


あ、いつもの水無月さんだ、と。

こんな状況のくせに、途端に安心してしまう自分がいた。


「わあ〜小野くんだ!小野くんー!」

「……ま、まあ、俺ですけど…」

「こんな人ばっかりの場所で、小野くんに会えるなんて思わなかった!」


俺も思わなかったです。

見つけてビックリしました。

自分の行動にもビックリしました。


そこまで考えて、ハッとして振り返る。

けれどそこに、さっきまで居たはずの男性の姿はなく。


「…あのー水無月さん。さっきの人は…?」

「さっきの人?」

「さっきまでここに居た人です。あの同僚の人ですよね?」


言うと、水無月さんは「え?」と。


「違うよ?さっきの人は、なんか知らない人だよ?」

「……え?」


知らない人……?