となりの水無月さん。






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夏祭りの夜は星が見えない。

代わりに電球や提灯が飾られて、地上は賑やかな空気一色になる。

小さな頃から、俺はこの雰囲気がとても好きで、そしてとても、寂しい。

この瞬間だけのものなんだよなあ、なんて考えてしまうから。


「花火何時からだっけ?」


隣に居た友人が、思い出したように言う。

この夏祭りの醍醐味と言っても過言ではない、最後の花火大会のことだ。

「9時とかだったかなー」と他の友人が答える中、そういえば去年はどうだったかなと、俺は記憶を掘り起こしてみる。

…1年って意外といろいろあるから、思い出せないものだ。



「花火見たら帰るかー」

「来年は彼女と来たいわ」

「就活しろ就活」

「ぎゃーやめろ!」


友人等のやり取りに笑いながら、人混みの中を意味もなく歩いていく。

9時かー、と、腕時計を確認しようとした時。


横目にふと、見慣れた姿を捉えた、気がした。


気のせいかもしれないのに、気づけば視線、続いて顔が、その方向へと向いていた。