隣に水無月さんが居ない。
それだけで何か、どこか、落ち着かない自分が居る。ような気がする。
別に、毎日一緒にいるわけじゃない。
大学に行ってる間は隣に居ないんだから、落ち着かないも何も、普通のことのはずなのに。
でも、帰れば水無月さんが居て、休みの日にも居て。
思えば、そんな時間をかき集めたらとても長い間、俺の隣には、水無月さんが居るんだなあ、と。
気付いてしまって、ふと、ひんやりしたものが、胃の辺りを伝っていった。
屋台の並ぶ歩行者天国には、人が数え切れないほどたくさんいて、あちこちから聞こえる会話や笑い声が、とりとめなく自分の耳に入っては、通り抜けていく。
『明日、友達と楽しんで来るんだよー!』
昨日、水無月さんが帰る間際、そう言って笑っていたのを思い出す。
水無月さんは今、楽しんで居るだろうか。
「小野ー焼き鳥食うー?」と塩胡椒味を差し出してくる友人に、「食うー」と答えて、俺は輪の中に戻った。


