小さな頭が下を向く。

髪の毛がカーテンになって、表情がよく見えない。


……なんでそんなに、落ち込むんですか、水無月さん。


無意識の内に、右手が彼女の頭に触れていた。

自分でも驚いて、自分の行動に驚きすぎて、水無月さんの頭に手を乗せたまま、身動きが取れなくなってしまった。


いつか水無月さんがしてくれたように、頭を撫でて、いいのだろうか。

なんて。



……ふるふるっと。

水無月さんが突然、頭を左右に振った。

俺の手を払う、というのとは真逆で、擦り寄る、みたいに。


「…セルフなでなで」


と、水無月さんがつぶやいた。


「小野くんは慰めるのも、とってもヘタだね」

「……すみません」

「いろんなことがヘタだ、小野くんは」

「……そう、ですか」


途切れながら相槌を打つ俺の手をとって、水無月さんは顔を上げた。

その顔に浮かぶのは、いつもの水無月さんの表情で、


「あんまり小野くん、お友達の話してくれないから、水無月さんは今とても安心しました」

そしてとても、嬉しく思いました。


「えへへ」と笑いながら、そう言った水無月さんに、俺は何も、言えなかった。