すると水無月さんは、眉根を寄せた表情から、眉を八の字にした顔になりながら、「あのね、」と。


「……西村が、明日お祭りだから、一緒に行くかーって」

「はあ……」

「でもそれなら私は小野くんと行きたいなあって思ったから、そう言ったら、じゃあもしその人の予定が合わなかったら一緒に行こうって……」

「…それで俺に明日の予定を」

「……うん」


しょんぼりうなずく水無月さん。


いつも思うけど、なんで水無月さんはその同僚の人と一緒に行かないんだろう。

なんでお隣に住んでるだけの、俺と一緒がいいんだろう。

……アレかな。俺がなんだかんだと水無月さんに負けっぱなしだからかな。

それはそれで悔しい気もする。

でも、水無月さんと一緒に居る時間の長さなら、きっとその西村さんのほうが長いだろうし、水無月さんの性格もよくわかっていると思う。

それなら別に、俺と一緒じゃなくてもいいんじゃないかなあ、と。

不思議でならない。この人は。


「……小野くん、明日ホントに空いてないの…?」


俯き加減で、水無月さんが聞く。

俺は特に意味もなく首の後ろに手を持って行き、「空いてない、です」と答えた。


「っていうか、俺も明日友達に誘われてるんです、お祭り」

「……そっかあ…」


それじゃあ、しょうがないね。

と、水無月さんにしては珍しく、覇気のない声で諦めを口にする。