「小野くん、明日お祭りあるの知ってた⁉︎」
仕事から帰ってくるなり俺の部屋に突撃してきた水無月さんは、慌てたようにそう聞いた。
俺は水無月さんの勢いに少し仰け反りながら、首を縦に振る。
「まあ、去年もこの時期でしたし…」
「なんでもっと早くに教えてくれなかったのー‼︎小野くんヒドイ‼︎」
ヒドくない。
なんて心の中だけで言い返している俺なんか知る由も無い水無月さんは、狭い玄関でヒールを鳴らし、身を乗り出す。
そのまま上がって来そうな勢いだ。せめて靴は脱いで欲しい。
「ねぇねぇ小野くん、明日空いてる⁉︎空いてるよね⁉︎」
「なんで俺がいつも暇人みたいに言うんですか!俺だって予定くらいありますよ‼︎」
「嘘だ!そんなの水無月さんは認めない‼︎」
「認めろよ‼︎」
言い返すと、水無月さんは「うぅ〜」と眉根を寄せて、唸った。
どことなく、困ったと言うか、寂しいというか、そんな表情だ。
…あんまり見ないような顔。かも。
いつもの水無月さんの様子と違う気がして、俺は少し考えたあと、口を開く。
「…何かあったんですか?」